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障害者法定雇用率2.5%時代の企業対応と助成金制度完全ガイド【2025年最新】

日本における障害者雇用の促進は、共生社会の実現に向けた重要な施策として、年々その重要性が高まっています。2024年4月には法定雇用率が2.5パーセントへと引き上げられ、さらに2026年7月には2.7パーセントへの段階的な引き上げが予定されており、企業にとっては対応が急務となっています。この法定雇用率の引き上げは、単なる法令遵守の問題ではなく、企業の社会的責任を果たし、企業価値を向上させる絶好の機会でもあります。また、障害者雇用を進めるにあたっては、国や独立行政法人から多様な助成金制度が用意されており、これらを効果的に活用することで、施設整備や雇用管理にかかる経済的負担を大きく軽減することができます。本記事では、2025年10月時点での最新の法定雇用率、企業が直面する課題とその対応策、そして活用可能な助成金制度について詳しく解説します。

障害者法定雇用率の最新動向と企業への影響

2024年から2026年にかけての法定雇用率の変遷

民間企業における障害者の法定雇用率は、2024年4月に2.5パーセントへと引き上げられました。この変更により、常用労働者が40人以上の企業が対象となり、従業員40人の企業では最低でも1人の障害者を雇用する義務が生じています。この制度改正の背景には、障害者の社会参加を促進し、多様性を尊重する共生社会を実現するという国の強い意志があります。

さらに重要なのは、2026年7月には法定雇用率が2.7パーセントへと段階的に引き上げられる予定であることです。これは企業にとって、今後2年間で計画的に障害者雇用を進める必要があることを意味しており、早期からの準備が成功の鍵となります。法定雇用率の引き上げは、単なる数値目標の変更ではなく、企業の人事戦略や職場環境の整備に大きな影響を与える変化といえるでしょう。

この法定雇用率を達成していない企業、特に100人以上の労働者を雇用している企業には、障害者雇用納付金として不足する障害者1人当たり月額5万円が徴収されます。年間に換算すると1人当たり60万円となり、複数人不足している場合はその人数分が積算されるため、企業にとって決して無視できない経済的負担となります。

除外率制度の引き下げとその影響

2025年4月には、特定業種における除外率の一律10ポイント引き下げという重要な制度改正が実施されました。除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数に除外率を乗じた数を控除して実雇用率を算定できる制度です。

たとえば、医療業では除外率が30パーセントから20パーセントに、建設業では一部の業種で引き下げが実施されています。この除外率の引き下げにより、これまで障害者雇用の対象外とされていた労働者の一部が雇用率の算定に含まれることとなり、実質的に企業が雇用すべき障害者の数が増加することになります。特に除外率設定業種の企業は、この変更への対応が重要な経営課題となっています。

短時間労働者の算定対象化

2024年4月から施行された重要な変更点として、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者も雇用率の算定対象に加わりました。これらの障害者は雇用率の計算時に0.5人分として換算されます。

この変更により、企業はより柔軟な働き方を提供しながら障害者雇用を進めることが可能になりました。特に、精神障害者発達障害者の中には、長時間の勤務が困難な方も多いため、この短時間労働者の算定は、そうした方々の雇用機会を広げる効果が期待されています。企業にとっても、段階的に勤務時間を延ばしていくというアプローチが可能になり、リスクを抑えながら障害者雇用を進められるメリットがあります。

企業が障害者雇用に取り組む戦略的メリット

企業価値向上とESG経営への貢献

障害者雇用は企業にとって法的義務であると同時に、さまざまな戦略的メリットをもたらします。まず挙げられるのは、企業の社会的責任を果たすことによる企業価値の向上とイメージアップです。近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが企業評価の重要な指標となっており、障害者雇用SDGs目標8「働きがいも経済成長も」目標10「人や国の不平等をなくそう」に直接貢献する取り組みとして位置づけられています。

これにより、投資家や取引先、消費者からの信頼を獲得することができ、企業ブランドの向上につながります。実際に、障害者雇用率の企業ランキングでは上位企業が社会的に高く評価されており、採用活動においても優秀な人材を引きつける要因となっています。

業務プロセスの最適化と組織力の強化

次に重要なメリットは、業務の見直しと最適化のきっかけになるという点です。障害者が働きやすい環境を整備する過程で、業務フローの再設計や標準化が進み、結果として組織全体の業務効率が向上することがよくあります。これまで属人的だった業務が可視化され、誰でも遂行できるような仕組みづくりにつながるのです。

さらに、組織のコミュニケーションの活性化と心理的安全性の向上という効果もあります。障害者が働きやすい職場は、すべての従業員にとって働きやすい職場であることが多く、多様性を尊重する文化が醸成されることで、従業員全体のエンゲージメントが高まる傾向があります。実際に、障害者雇用に積極的に取り組む企業では、従業員の離職率が低いという調査結果も報告されています。

助成金による経済的メリット

また、各種助成金を受給できるという直接的な経済的メリットも見逃せません。障害者の雇い入れや雇用継続のための措置を講じる場合、国や独立行政法人から多様な助成金が支給されます。これにより、施設整備や環境調整に必要な一時的な経済的負担を軽減することができます。助成金の種類は多岐にわたり、企業の状況や取り組み内容に応じて最適なものを選択することができます。

障害者雇用における主要な助成金制度

特定求職者雇用開発助成金の全体像

障害者雇用に関する助成金の中で最も基本的かつ重要なのが、特定求職者雇用開発助成金です。この助成金は、身体障害者知的障害者精神障害者などの就職が特に困難な方をハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介により、継続して雇用する労働者として新たに雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部に相当する額を一定期間助成する制度です。

特定就職困難者コース

このコースは、高齢者や障害者などの就職困難者を継続的に雇い入れた場合に支給されます。支給対象者1人につき、1年から3年にわたって60万円から240万円が支給されます。

具体的な支給額は、雇用する障害者の障害の程度、雇用形態、企業規模などによって異なります。たとえば、重度障害者を短時間労働者以外の労働者として雇用した場合、大企業では最大240万円、中小企業ではさらに手厚い支給が受けられます。

この助成金を受給するためには、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れることが必須条件となります。また、雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められる必要があります。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害や難病のある方を、ハローワークなどの紹介によって継続して雇用する事業主に対して助成される制度です。発達障害者支援法に規定する発達障害者、または障害者総合支援法に規定する難病患者が対象となります。

このコースでは、雇用形態や企業規模によって支給額が異なり、中小企業の場合は最大で120万円、大企業の場合は最大で50万円が支給されます。発達障害や難病は外見からは分かりにくい障害であり、適切な配慮があれば十分に能力を発揮できる方が多いため、この助成金を活用した雇用促進が期待されています。

トライアル雇用助成金による段階的アプローチ

トライアル雇用助成金は、障害者を試行的に短期間雇用することで、企業と障害者の相互理解を深め、その後の常用雇用への移行を促進することを目的とした助成金です。

障害者トライアルコース

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、就職が困難な障害者を一定期間試行雇用する事業主に対して助成されます。原則3か月のトライアル雇用期間中、対象者1人につき月額最大4万円が支給されます。精神障害者の場合は、最初の3か月は月額最大8万円が支給されます。

障害者短時間トライアルコース

精神障害者発達障害者を、週の所定労働時間を10時間以上20時間未満として試行的に雇い入れ、期間中に20時間以上の勤務を目指すコースです。最長12か月間、対象者1人につき月額最大4万円が支給されます。

このトライアル雇用制度は、企業にとっては障害者雇用の経験を積むことができる、障害者にとっては自分に合った職場かどうかを確認できるというメリットがあり、双方にとってリスクを抑えながら雇用を進めることができる有効な制度です。初めて障害者を雇用する企業には特におすすめのアプローチといえます。

障害者雇用納付金関係助成金の詳細

障害者雇用納付金関係助成金は、2024年4月1日から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に移管されました。この助成金は、事業主等が障害者の雇用にあたって、施設・設備の整備等や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行わなければ、障害者の新規雇い入れや雇用の継続が困難であると認められる場合に支給されます。

障害者作業施設設置等助成金

障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主で、その障害者が障害を克服し作業を容易に行えるよう配慮された施設または改造等がなされた設備の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。

具体的には、作業設備、作業施設、附帯施設、作業を容易にするために必要な機械・器具などの購入、賃借、施設の整備や改修などが対象となります。助成額は、対象となる費用の3分の2が上限となります。ただし、中小企業事業主の場合は特例として、条件によってはさらに手厚い助成を受けられる場合があります。

障害者福祉施設設置等助成金

障害者を現に雇用する事業主または当該事業主の加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置または整備を行う場合に、その費用の一部が助成されます。

助成率は、設置・整備に要した費用の3分の1が原則ですが、障害者を多数雇用している場合などは特例的な取扱いがあります。

障害者介助等助成金

障害者の雇用を促進するため、または雇用を継続するために、その障害者が障害を克服して就労することができるよう、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助者の配置等の特別な措置を実施する事業主に助成されます。

介助等の措置には、職場介助者の配置または委嘱、職場介助者の養成、手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱、健康相談医師の委嘱などが含まれます。聴覚障害者や視覚障害者の雇用において、特に重要な助成金といえます。

職場適応援助者助成金

障害者の職場適応を促進するため、職場適応援助者による支援を行う事業主に助成されます。職場適応援助者とは、いわゆるジョブコーチと呼ばれる専門職で、障害者が職場に適応できるよう、作業指導や人間関係の調整などのきめ細かな支援を行います。

ジョブコーチは、障害者本人だけでなく、企業側にも障害特性に応じた配慮の方法や業務の工夫についてアドバイスを提供するため、円滑な職場定着に大きく貢献します。

障害者能力開発助成金

障害者の職業能力開発を推進するため、障害者の能力開発訓練事業を実施する事業主や事業主団体に対して助成されます。障害者の能力を高めることで、より多様な職務に就くことができるようになり、雇用の安定と職業生活の充実につながります。

障害者雇用相談援助助成金

2025年度に新設された助成金で、対象障害者の雇い入れおよびその雇用の継続を図るために必要な雇用管理に関する一定の要件を満たす援助の事業を行う企業を対象に、1社1回限りで60万円が支給されます。中小企業事業主または除外率設定業種の事業主の場合は80万円に増額されます。

この助成金は、企業が障害者雇用を進めるにあたって、社内に相談体制を整備し、専門的な知識を持つ担当者を配置するなどの取り組みを支援するものです。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

障害者雇用安定助成金の流れを引き継ぐ形で設けられた制度で、有期雇用で働く障害者を正規雇用または無期雇用に転換した事業主に対して助成されます。

障害者の雇用の安定を図るとともに、キャリアアップを支援することで、障害者がより長期的に安心して働ける環境を整備することを目的としています。この助成金は、障害者の定着率向上にも大きく貢献する制度です。

助成金申請の実務と注意点

申請の基本的な流れ

助成金を受給するためには、助成金の対象となる要件を満たすことはもちろん、事業主が申請期間内に適正な支給申請を行うことが必要です。

多くの助成金では、雇い入れ前にハローワークや支援機構への事前手続きが必要となりますので、雇用後に申請しても受給できない場合があります。したがって、障害者の雇用を計画する段階から、ハローワーク都道府県労働局、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構と十分に相談し、必要な手続きを確認しておくことが重要です。

申請時の重要な注意事項

また、助成金予算の範囲内で支給されるため、年度途中で予算が尽きた場合は受給できない可能性もあります。早めの計画と申請が望ましいといえます。

申請に必要な書類は助成金の種類によって異なりますが、一般的には、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、障害者手帳の写し、事業所の概要がわかる書類などが必要となります。申請の詳細については、最寄りのハローワーク都道府県労働局、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構都道府県支部にお問い合わせください。

合理的配慮の提供義務化への対応

2024年4月からの重要な制度変更

2024年4月1日から、障害者差別解消法の改正により、事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されました。これは障害者雇用促進法における事業主の義務と並ぶ重要な制度です。

合理的配慮とは、障害者が他の者と平等に人権や基本的自由を享受し、行使できるよう、障害の特性や具体的場面に応じて行われる調整や変更のことを指します。ただし、事業主に対して過度の負担を課さない範囲で行われるものとされています。

雇用分野における合理的配慮の具体例

募集・採用時の合理的配慮としては、視覚障害者に対する点字や音声による採用試験の実施、聴覚障害者に対する筆談による面接の実施、車いす使用者が利用可能な面接会場の設定などが挙げられます。

採用後の合理的配慮としては、車いす利用者のための施設のバリアフリー化、知的障害者に対する図やイラストを活用したわかりやすい業務指示書の作成、精神障害者発達障害者のための出退勤時刻の調整や短時間勤務の許可、通院への配慮などがあります。

また、聴覚障害者のための筆談や読み上げソフトの導入、視覚障害者のための音声ソフトや拡大文字の使用、業務遂行を援助する者の配置なども合理的配慮に含まれます。

合理的配慮の決定プロセス

合理的配慮は、障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべきものです。障害者からの申出を受けて、事業主は障害者と話し合いを行い、どのような配慮が必要で、どのような配慮が可能かを検討します。

事業主は、障害者の希望する配慮の内容が、過度の負担にならない限り、提供する義務があります。過度の負担となる場合でも、代替となる措置を提案し、話し合いを継続することが求められます。

過度の負担かどうかの判断は、事業活動への影響の程度、実現の困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無などを総合的に勘案して行われます。

障害者雇用のための支援機関とサービス

ハローワークの役割

企業が障害者雇用を進めるにあたっては、さまざまな支援機関やサービスを活用することができます。

ハローワークは、障害者の職業紹介を行うとともに、企業に対して障害者雇用に関する各種相談や助成金の申請支援を行っています。また、障害者向けのセミナーや企業見学会なども開催しており、企業と障害者のマッチングを支援しています。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、障害者雇用納付金関係助成金の申請窓口であるとともに、障害者雇用に関する専門的な相談支援、情報提供、研修などを実施しています。各都道府県に支部があり、地域に密着した支援を受けることができます。

この機構では、障害者の雇用管理や雇用形態、職場環境、職域開発などについて、事業所が実践している取り組みをテーマ別に紹介しており、企業が自社に合った取り組みを見つける参考になります。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者の就業面と生活面の一体的な支援を行う地域の支援機関です。障害者本人だけでなく、雇用する企業に対しても、職場定着のための助言や、障害特性に応じた配慮の方法についてのアドバイスなどを提供しています。

就業面だけでなく生活面の支援も行うため、障害者が安定して働き続けるための総合的なサポートが受けられる点が大きな特徴です。

就労支援事業所との連携

また、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などの福祉サービス事業所と連携することも有効です。これらの事業所では、障害者が一般企業への就職を目指して訓練を行っており、企業はこれらの事業所と協力して、実習の受け入れや、段階的な雇用の開始などを進めることができます。

職場定着支援の重要性と具体的方法

職場定着支援が重要な理由

障害者を雇用した後、その障害者が職場に定着し、能力を発揮できる環境を整えることは、企業にとって非常に重要です。厚生労働省の統計によれば、民間企業に雇用されている障害者数は、前年より3万5283.5人多い67万7461.5人となり、21年連続で過去最高を更新しました。実雇用率も前年比0.08ポイント上昇の2.41パーセントとなり、こちらも過去最高です。

このような増加傾向の中で、職場定着支援の質を高めることが、企業の障害者雇用の成功を左右します。

効果的な職場定着支援の取り組み

職場定着を支援するための具体的な取り組みとしては、まず定期的な面談の実施があります。月に1回程度、上司や人事担当者が障害者と面談を行い、業務上の悩みや体調、職場での人間関係などについて確認します。

次に、職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用です。ジョブコーチは、障害者が職場に適応するための専門的な支援を行い、作業手順の見直しや、同僚との円滑なコミュニケーションのためのアドバイスなどを提供します。

また、障害者就業・生活支援センターとの連携も効果的です。この機関は、就業面だけでなく生活面の支援も行うため、障害者が安定して働き続けるための総合的なサポートを提供できます。

さらに、社内の障害理解の促進も重要です。定期的に研修を実施し、障害特性や適切な配慮の方法について、すべての従業員が理解を深めることで、職場全体で障害者を支える体制が構築されます。

業務内容の見直しとキャリア開発も必要です。障害者の能力や適性に応じて業務内容を柔軟に調整し、また能力開発の機会を提供することで、障害者のキャリアアップを支援します。

企業が取り組むべき具体的なステップ

第一段階:経営層のコミットメント獲得

障害者雇用を成功させるために、企業が取り組むべき具体的なステップを整理すると、まず経営層の理解とコミットメントを得ることが重要です。障害者雇用は、単なる法令遵守ではなく、企業の社会的責任を果たし、企業価値を高める戦略的な取り組みであることを、経営層が理解し、リーダーシップを発揮する必要があります。

第二段階:現状分析と目標設定

次に、現状分析と目標設定を行います。自社の現在の雇用率、不足人数、職場環境の現状などを把握し、具体的な雇用目標と達成期限を設定します。2026年7月の法定雇用率引き上げを見据えた中期的な計画も必要です。

第三段階:社内体制の整備

社内体制の整備を進めます。障害者雇用推進者や障害者職業生活相談員の選任、相談窓口の設置、研修プログラムの実施などを通じて、組織全体で障害者雇用を支える体制を構築します。

第四段階:採用活動の開始

採用活動の開始です。ハローワークへの求人申込み、障害者就職面接会への参加、就労移行支援事業所との連携、職場実習の受け入れなど、複数のチャネルを通じて採用活動を展開します。トライアル雇用の活用も効果的です。

第五段階:職場環境の整備

職場環境の整備を行います。必要に応じてバリアフリー化や作業設備の改修を行い、障害者雇用納付金関係助成金を活用して経済的負担を軽減します。

第六段階:定着支援の実施

採用後の定着支援に力を入れます。定期面談、ジョブコーチの活用、業務内容の見直し、キャリア開発の機会提供などを通じて、障害者が長期的に安心して働ける環境を整えます。

第七段階:継続的な改善

継続的な改善を行います。定期的に雇用率の達成状況を確認し、課題があれば改善策を講じます。また、新しい制度や助成金の情報を収集し、活用可能なものは積極的に取り入れていきます。

障害者雇用と企業の持続可能性

SDGsとの関連

障害者雇用は、SDGsの達成に貢献するだけでなく、企業の持続可能性を高める重要な取り組みです。多様な人材が活躍できる組織は、イノベーションを生み出しやすく、環境変化への適応力も高いことが、多くの研究で示されています。

障害者雇用を通じて培われる、個々の特性に応じた柔軟な働き方の提供、丁寧なコミュニケーション、業務の標準化と可視化などのスキルは、すべての従業員にとって働きやすい職場づくりにつながります。

従業員エンゲージメントの向上

また、障害者雇用に積極的に取り組む企業は、従業員のエンゲージメントが高く、離職率が低い傾向があることも報告されています。これは、企業が多様性を尊重し、一人ひとりを大切にする姿勢を持っていることが、従業員全体の満足度を高めるためです。

ステークホルダーからの評価向上

さらに、投資家や取引先、消費者からの評価も高まります。ESG投資が主流となる中、障害者雇用を含む社会的責任への取り組みは、企業の評価を左右する重要な要素となっています。

納付金制度と調整金・報奨金

納付金制度の仕組み

障害者雇用促進法では、常用労働者100人超の企業が法定雇用率を達成していない場合、障害者雇用納付金を納付する義務があります。

納付金の額は、不足する障害者1人当たり月額5万円です。これは年間で60万円となり、複数人不足している場合はその人数分が徴収されます。たとえば、法定雇用率から3人不足している場合は、年間で180万円の納付金が必要となります。

調整金と報奨金の制度

逆に、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、調整金が支給される場合があります。常用労働者100人超の企業で法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合、超過1人当たり月額2万7千円が支給されます。

さらに、常用労働者100人以下の企業で一定数以上の障害者を雇用している場合は、報奨金が支給される制度もあります。

これらの制度により、障害者雇用に積極的に取り組む企業を経済的に支援し、社会全体で障害者雇用を推進する仕組みが構築されています。